2003年から2007年頃まで、ファミリーライフエデュケーターとして、パパのための子育て講座をよくやっていました。
私の講座は一方通行の講義ではなく、参加者が自由におしゃべりするスタイルなので、興味深い意見が次々飛び交います。
ある父親が、
「男が働いて女が家事育児でなにが悪い。最近、父親に育児しろと世間がうるさすぎる。こっちは肩身が狭くなるばかりだ」
といえば、他の父親が、
「いやあ、うちは共働きだから料理は全面的にぼくがやってます。お互い働いてると助け合うのがあたりまえという感じで…」
と応戦。
「やってもやっても、奥さんに、協力が足りないようにいわれて…」
と若い父親が悩みを相談すれば、他の人が、
「そうなんだよ。奥さんにもわかってほしいところはある」
と共感するという具合。
まあ、思い切ってざっくり言ってしまうと、とにかくママの気持ちがわからないで困っているパパが多かったかな。
そしてつい最近も、
「それなりにやっているつもりなのに、どうも口げんかになってしまう」
「自分なりに頑張ったつもりなのに。文句を言われる理由がわからない」
って、あの頃と同じような悩みをあるパパから聞き、
なんじゃい、パパたちの悩み、あれから10年以上たっても(今2020年)、ちっとも変わっていないのか?
と思って、昔パパたちのために書いたエッセイを引っ張り出してリライトしました。
読んでみてくださいませ。
忙しいパパたち
A子さんとB子さんは、どちらも赤ちゃんが生まれたばかり。二人とも、仕事をやめ、初めての子育てに奮闘中です。
夫は揃って忙しく、なかなか子育てに協力してもらえません。
たまーに、お風呂に入れてもらうのがせいぜいで、普段はまったくあてに出来ません。たまの休みも、突然のトラブルで呼び出されたり、会社絡みの外出が入ったり……。せっかく家族が増えたのに、悲しくなってしまう状況です。
それでもA子さんは、夫の状況を理解しようと努め、
「仕方がないよね」
と笑います。
一方B子さんは、いつも帰宅した夫と責めあいになってしまい、
「もう限界!」
と、追いつめられた気分です。
この違いは、いったいどこから来るのでしょう。
ほんの少しのねぎらいの言葉で……
正解は、夫のかけてくれる言葉の違いなんです。
A子さんの夫は、
「いつもありがとう、手伝えなくてごめんね」
といい、B子さんの夫は、
「子育ては母親の仕事だろ、俺、忙しいから任せるよ」
という。A子さんの夫は、
「お風呂入れて、着換えさせて寝せておくから、ゆっくりしていていいよ」
といい、B子さんの夫は、
「わかったよ、風呂いれるから、呼んだらバスタオルもってすぐ来いよ」
という。
愛していても、優しい言葉をかけるのが苦手なのかもしれません。
子育てがそんなに大変だとは、想像できないのかもしれません。
だけどパパたち、どうか知ってください。
子育ての相談で、深い悩みを抱えているなあ、と感じるお母さんの話をよくよく聴いてみると、結局は、必ずといっていいほど夫婦関係の悩みが芯に隠れています。B子さんの夫タイプを持つ妻が、みんな苦しんでいるのです。逆にA子さんのような場合は、たとえ悩みがあっても、最終的には夫と二人でなんとか乗り越えていく、そんな印象があります。
共働き家庭が片働き家庭の数を逆転して、イクメンという言葉も定着したけれど、実は、まだまだ母親中心の子育ては多くあって。
そして孤独な子育てに辛い気持ちでいるママたちと、日々の忙しさに負けてママを支えきれないでいるパパ。
そんな構図も、まだまだある様子。
この日々の渦中にいるときは、それが永遠に続くような気がするけれど。
子育てが大変なのは、長い長いカップル生活の一時期でしかありません。
パートナーとの関係を、老いて果てるまで、ずっと続けていくためには、ここでくじけてはいけません。
ほんの少しのねぎらいの言葉で、子育て中のママたちは、とてもとても救われます。
言葉が現実に魔法をかける
仕事をバリバリやりたい時期と小さい子どもを育てる時期は、どうしても重なってしまうことが多いです。
だから、パパも余裕がない日々を過ごしているのだと思います。
本当に大変なんだけど、ここをなんとか乗り越えて、一生添い遂げられれば、それに越したことはありません。
(もちろん、我慢に我慢を重ねてとか、そういうことまでしなくてもいいと思いますが。)
そのためにパパたちにお願いです。
なんとか踏ん張って、不機嫌にならずに、気を取り直して、
ママに言葉の魔法をかけてください。
心からのいたわりの言葉は、魔法のように子育てに疲れたママを癒します。
そうしたらきっと、歯車が逆に回り始める。
言い争いばかりの毎日が、いたわり合う日々に変わるまで、