乳幼児の子育て

いまでも忘れられない最高の子育て支援について

(「家族支援と子育て支援」と同時投稿です)

mami
mami
もう20年近く経つのに、しかも一瞬の出来事なのに、いまだに忘れられない、最高の子育て支援の話を聞いてください。

まだ私の子どもが小さかった頃のこと。3人目を産む前だったかな。

どこへ行った帰りだったのか、私はいつものように、前かごに下の子を、後ろに上の子を乗せて、自転車を走らせていた。

途中に急坂があって、私は自転車の三段ギアを1に入れ、必死の形相でその坂に挑んだ。

ママチャリ経験者ならわかると思うが、前と後ろに子どもを乗せて歩いて坂を上るのは、バランス的にしんどい。
ここはなんとか、自転車から降りずにこの坂を乗り切りたい。
私は必死で、全身の力を込めてペダルを踏んだ。
ひとこぎが重い。
前と後ろの子どもたちは、親の苦労も知らずに鼻歌まじりで乗っている。
孤独な闘いの母(私)。

すると急に。

ふわり と身体が軽くなった。
スイスイとペダルがこげる。
いったいどうしたんだろう!?

驚いて後ろを振り返ると、工事現場の交通整理のおじさんが、私の自転車を押しながら走ってくれている!

力強く。頼もしく。
彼だけの力で、どんどん自転車は前に進んでいく。

坂の終わり。
私が難なく自転車をこげるようになったのを見計らって、
おじさんはすうっと手を離した。

「がんばれよ!」

おじさんは、私の背中に向かって、大きな声でそう叫んだ。

私の目から、涙が溢れた。
両腕はハンドルを握っているから、涙はぬぐえない。
流れる涙そのままに、私は顔をくしゃくしゃにしながら走り続けた。

今から考えると、
小さな子ども二人乗せて、泣きながら自転車を走らせるお母さんを、周りの人はどう思っていたのかな……。

まだその頃は、
自転車の3人乗りが合法的に認められていなくて、
テレビでは、コメンテーターが
「最近、子どもを前・後ろに乗せて、公道を自転車で走っているお母さんいますけど、あれ、危ないですよね。なに考えているんでしょうか」
って言っている時代だった。
テレビの中の人たちは、そのコメントに大きくうなずき、世間様も、その考えに同調していた。

それでも、
私達ワンオペ育児ママは、必要に迫られて、そうするしかなくて。

だって、歩いたらこうなるよね?

ちなみに、2000年代の初めに、私たち支援者と当時のお母さんたちが頑張って実情を訴えて、乳幼児との自転車3人乗りが正式に認められ、それでいろんなタイプのママチャリが発売されていったんですよー。

だからその当時は、
ダメだって言われながら、
いつも肩身の狭い思いで自転車をこいでいたから、
助けてもらえることがあるなんて、まーったく期待していなかった。

でも、おじさんは、
”ルール違反”の私たち親子に
全身の力を使って、
そのとき一番必要なことを、
何の見返りもなく、ただ提供してくれたんだ。

そして、おじさんは、
私が自力で頑張れる場所に来たら、
自然な形で手を離して、
その場から見送り、
「がんばれよ!」って
優しい声をかけてくれた。

私が子育て支援と呼ぶのはこれなんです。
おじさんは、自分が子育て支援をしたとは、これっぽっちも思っていないでしょうけどね笑。

いろんな人が、いろんな本を書いて、子育て支援はこういうものとか、子育て支援はこうあるべきとか、(あ、私もそういうサイトを書いているから同じか汗)言ってっけど、そんなんどーでもいい。
子育て支援ってこういうことなんだよ………。

mami
mami
きっとあの人は、地方からの出稼ぎ者で、彼の住んでいる町は、優しさに溢れたまちなのだろうと、勝手に想像しています。