小中高生の子育て

もうお前は勉強ができなくてもスポーツができなくても、そんなことはどうでもいい(いじめの話)

末っ子が小3の春に、私はフルタイムの教員になったから、新しい仕事に没頭してばかりで、彼のことはほとんど見てやれなかった。

お姉ちゃんは高校までは進学校に行ったし、
お兄ちゃんはスポーツで結果を出した。

でもこの末っ子はどちらもパッとせず、私が手をかけなかったから伸ばしてやれなかったのか?と後悔がよぎる。

でも、過ぎた日々は戻らない。放任してしまった過去は取り返せない。

勉強もスポーツもパッとしないコイツは、凡人として一生を送るのであろうと、親も本人も露ほども疑わずに育っていった。

それが……。

天地がひっくり返った日

2017年
末っ子、高3。

家族で何気なく見ていたテレビで、いじめ問題を取り上げている。
そういえば……と思って聞いてみる。

「おまえの学校でもいじめとかあったの?」
「あったよ、中2の時」

5年前か。

「それで、いじめがおきたときおまえどうしたの?」
「やめさせた」

「やめさせた? やめさせたって、おまえが?!」

「うん、俺いじめだいっきらいだから」
「なんできらいなの?」
「だって、俺って勉強もスポーツもできないから、完璧いじめられるタイプじゃん。だからいじめられたらいやだなって思って。だからきらい」

「……いじめられたことあるの?」
「それがないんだよ! それで、すごく幸せだったから、いじめは、ないほうがいいなあと思って」

たしかにこいつは昔から、勉強もスポーツもできないのに人気だけはあった。

「それなのに、中2の時、俺よりスポーツもできてお金持ちのヤツがいじめられていたからさ、そいつがいじめられることはないよなあと思って」
(彼はときおり、このような謎の論理展開で話を進める。)

「でも、どうやってやめさせたの?」
「いじめてるヤツを殴った」
「え!!! クラスメート殴るって大問題じゃん。学校で問題にならなかったの?」
「だって先生知らないもん。(先生がまだ教室に来ない)朝のうちの出来事だから」
「よくもまあ……。」
「みんなうっすらそいつがいじめていること嫌だなって思ってたから、代表でやったんだよ。そしたらいじめなくなった」

すごいな、おまえ。

大人の知らないうちに一人でいじめ解決かよ。

「あ、俺それ以外、人を殴るなんてしてないからね」
そりゃ、そうじゃないと困る。

「でも、俺が殴ったいじめっ子のヤツ、逆にそれ以来嫌われちゃって、クラスで話すヤツいなくなって、それからずっと俺とだけ話してた」

……昨日の敵でも、あくまで弱者の味方かよ。

もういいや。
おまえは勉強ができなくてもスポーツができなくても、そんなことはどうでもいい。

そんなレベルの話じゃない。

もっとでっかいスケールで、おまえはちゃんと生きてる。

大人の知らないところでいじめを解決して、
それを5年間も誰にも言わずに(というか、聞かれなければ一生言わなかっただろう)
のんきな顔してるんだからさ。

しかも、いつも弱者に寄り添って。

おまえのすごさにうちのめされたわ。

後日談

2020年冬

20歳になった末っ子が、成人式に行かないと言う。

中学時代人気者だったから、みんなお前に会いたいだろうに、なんで行かない?

「成人式の後のクラス会に、地味なヤツら呼んでないんだよ。俺そういうのキライだから、行くのやめた。集まるなら全員に声かければいいのに」

お前、相変わらずカッコいいな。

日常的には、ほんっと、どこにでもいる、ゲーム好きの大学生なんだけどな……。

everyone
everyone
結局、究極の自慢話じゃね?
mami
mami
なんと言われようと、私はこの話を吹聴するのはやめないぞ!